
金魚飼育をする上で発生率の高い病気のひとつに尾ぐされ病があります。
尾ぐされ病は主にカラムナリス菌によって尾びれの先端が白く濁り腐ったようになり、進行するにつれて溶けて行ってしまう病気です。
カラムナリス菌は酸素がある環境を好む好気性菌なので体内に侵入することはありませんが、感染力が非常に強いので自然治癒が難しいです。
ここでは尾ぐされ病の発生原因と、薬による治療方法を写真付きの実例でお伝えしたいと思います。
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尾ぐされ病とは
尾ぐされ病とは、カラムナリス症(ヒレ腐れ病、口腐れ病、エラ腐れ病など)のうちの一つで、主にカラムナリス菌により発生します。
5~35℃で発生するため1年中発症の可能性があり、約27~30℃の水温ではカラムナリス菌の繁殖が盛んで、尾ぐされの発症や進行にとって好環境になります。
初期症状は尾びれの先端から白く濁りながら溶け始め、進行すると木の枝のごとく骨部分のみが残ります。
この際に尾びれの毛細血管は充血しますので、よく見ると血筋があるのを確認できます。
カラムナリス菌は塩に弱く、尾ぐされ病の個体を濃度0.5%以上の塩水に24時間以上浸すことで繁殖が抑制されますが、あくまでも繁殖を抑制するだけで死滅するわけではありません。
また病気の進行も早いため塩浴で24時間経たないうちに重症化し、塩浴や薬浴が効かない状態に陥ることもあるのです。
参考 → グッピーのカラムナリス病に関する研究(2)┃アグリナレッジ
色々な症状
尾ぐされ病の代表的な症状は尾の先からボロボロになっていく形です。


以下のように一部が充血しボロボロになるのもおそらく尾ぐされ病です。
こちらの症状は100%尾ぐされ病だとは言いにくいですが、水替えのみで治りましたので細菌による発症である可能性が高いです。

尾ぐされ病の原因
カラムナリス菌はエロモナス菌と同じ常在菌であり、水槽内から完全に駆除することは不可能です。
つまりどんな状況でも尾ぐされ病が発生し得るのです。
水質悪化や環境変化、ストレスにより個体の体力が低下すると防具服である粘膜の分泌も低下し、カラムナリス菌が尾びれに付着します。
付着したカラムナリス菌はタンパク質を分解する酵素を出します。
これが原因で徐々に尾びれが溶けていき「尾ぐされ病」となります。
他の魚からの感染も
カラムナリス菌は非常に感染力が強い病気ですので、例えば尾ぐされになった個体と同じ水槽で飼っていた金魚が数日後に発症することがあります。
また、ペットショップで購入した個体が菌を大量に持って帰ってきたということも考えられますので、トリートメントはしっかりと行いましょう。
仮に本水槽で尾ぐされ病が発生した場合は、病気の金魚だけでなく一緒にいたものも治療(またはトリートメント)を行った方が無難です。
病気が出た水槽は水全替え、フィルターも掃除・お湯消毒をすると良いです。
夏場は繁殖期
先ほどもお伝えした通りおよそ27~30℃の水温ではカラムナリス菌の繁殖が盛んになるため、夏場は尾ぐされが発症しやすくなります。
水温が高いと金魚の消化機能が良くなり餌をたくさん多く食べるため、飼育者もつい多く餌やりをしがちですが、残りカスや糞などの影響で水が汚れます。
これにより水質の悪化も早く、魚にとってはストレスになり体力低下を引き起こし、尾ぐされ病が発生する原因になります。
ですので夏場は過剰な餌やりに十分注意し、水質管理にも気を配りましょう。
【注意】寄生虫による二次感染

水質が大変良いのに尾ぐされ病が発生する場合があります。
その原因として、白点虫やイカリムシ、ギロタグチルスなどの寄生虫が挙げられます。
寄生虫は基本的に個体に寄生する時(又はその後)に、粘膜を破ったり身体そのものを傷つけます。
この傷に細菌が入り込み、尾ぐされを発症するのです。
白点虫やイカリムシはある程度目で確認できるのもありますが、ギロタグチルスは肉眼で確認するのがかなり困難で、これを除去しない限り菌は永遠に入ってきます。
尾ぐされ病の治療薬は寄生虫に効果がなく、薬のせいで金魚の体力だけを奪ってしまうことがあるので注意が必要です。
そのため、尾ぐされ病の前に寄生虫除去の治療をする必要があります。
基本的に尾ぐされと寄生虫の同時治療は難しいので、個体の購入後はリフィッシュなどの薬を用いてしっかりとトリートメントを行いましょう。
有効な薬
カラムナリス菌は進行が早く感染力も高いのが特徴で、進行すると常在菌のエロモナス菌も悪玉となり尾ぐされ病がさらに深刻になります。
つまり重症化する治療が困難になりますので、なるべく初期~中期症状で治療したいです。
ただし、以下の写真のように超初期症状(まだ尾ぐされ病かも不明な程度)ならば0.5%塩浴や水替えのみで治ることもあります。

カラムナリス菌やエロモナス菌はグラム陰性菌(着色しない・着色剤で死滅しない)なのでメチレンブルーやマラカイトグリーンは効きません。
ただし、マカライトグリーンが含有されているフレッシュリーフは、成分中にスルファジメトキシンナトリウム(サルファ剤)が入っているので初期症状には有効です。
有効なのはオキソリン酸やフラン剤、サルファ剤が使用されている以下の薬です。
![]() |
グリーンFゴールドリキッド(オキソリン酸系) |
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観パラD(オキソリン酸系) |
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グリーンFゴールド顆粒(フラン剤系) |
![]() |
エルバージュエース(フラン剤系) |
薬の強さ的にオキソリン酸では「グリーンFゴールドリキッド」<「観パラ」であり、フラン剤では「グリーンFゴールド顆粒」<「エルバージュエース」です。
特にグリーンFゴールド顆粒とエルバージュエースはきつい薬ですので、必ず量や使用期間を守ってください。
薬の変更も有り
上記の薬はカラムナリス菌にもエロモナス菌にも有効ですが、中にはオキソリン酸やフラン剤、サルファ剤に耐性を持ってる菌も存在します。
その場合症状が改善しないことがあるため、一度薬浴をやめて塩浴又は淡水に戻して体力を回復させた後、薬の種類を変更して再度薬浴させる方法もあります。
例えばオキソリン酸の観パラDで5日薬浴したが尾ぐされが全く改善せずむしろ進行している場合、一度薬浴をやめてからフラン剤のグリーンFゴールド顆粒を使用してみる、といった具合です。
どの薬が効くかは実際に薬浴してみないとわからないので、金魚に負担にならないように試してみてください。
治療方法
初期~中期の症状であれば塩水により菌の繁殖が抑えられるので0.5%塩浴を行い、さらに薬浴をします。
- 温度合わせ・カルキ抜きをする
- 1日かけて0.5%分の塩を投与
- 1日かけて適量の薬を投与
- 水替えは2~3日に1回
1.まずは治療用の水槽で温度合わせ・カルキ抜きをした水を用意します。
もちろんエアレーションをかけますが、あまり水槽内に水流ができないように水面すれすれのところにストーンが来るように調整します。
2.水量に対して0.5%分(10Lならば塩は50g)の塩を用意し、1日かけて又は3回に分けて投与します。
うちの治療では金魚さんを入れた直後に1回と、その1時間後ごとに2回の合計3回に分けて入れています。
塩浴の方法は別の記事で詳しくまとめています。
3.薬は1日かけて適量を投与します。
これも塩と同時に入れますので、3回に分けています。
オキソリン酸、フラン剤、サルファ剤はいずれも強い薬なので必ず量を守って投与しましょう。
4.塩や薬の投与完了後、水替えは2~3日に1回でOKです。
塩水は淡水に比べて傷みやすいので、少し濁ったなと思ったらすぐに水替えをします。
目で確認できる以上に汚れているので、一歩間違えれば菌にとって繁殖の好環境になってしまいます。
常にヒレの状況を確認
治療を開始したら常にヒレの状況を確認しましょう。
開始直後はまだ薬が浸透せずに、尾ぐされの進行スピードの方が早い可能性もありますが、2日目くらいに進行がストップすれば効いている証拠です。
もちろんそこで薬浴をやめずに続け、ヒレの白いボロボロがなくなったら治療成功です。
この時もすぐに本水槽に戻すのではなく、その後再発しないかを確認するために3~5日程度は塩浴又は淡水のみで経過を観察しましょう。
尾ぐされ病が発生した本水槽は水の8割替え又は全替え、そしてフィルターの掃除もしておくのがベストです。
餌やりに関して
治療中のエサやりに関してですが、尾ぐされ病の際に使用する薬はきつめのものが多く、その分金魚の体力も奪っていきます。
症状の改善のためには薬だけでなく魚の体力によるところも大きいので、普段よりも少量をあげます。
餌を食べる元気があるということはまだ薬に耐えられ、完治も可能な状態です。
ただ、餌の食べ残しやカス、糞で水がかなり汚れますので必ず水替えは全替えをしましょう。
写真付き治療実例
こちらのピンポンパールに尾ぐされ病が出ましたので治療していきたいと思います。
尾びれの先端がやや白くボロボロとなっていおり、尾ぐされ病の初期と判断しました。
治療の条件
今回の治療では
- 尾ぐされ初期
- ネットで購入後の個体
- ヒーターなし
- 1日に1回エサやり
- 0.5%塩浴
- グリーンFゴールド顆粒
- 時期は3月
の条件で行います。
このピンポンパールはネットで購入したもので、届いたときにはこの低温の時期でも非常に元気だったので加温なしで治療をします。
もちろん本水槽ではヒーターを使用予定です。
1日目
治療方法でのやり方に沿ってグリーンFゴールド顆粒で薬浴しています。
個体の状態は非常に元気だったので、餌(咲きひかり飼育用)を1粒あげました。
食いつきもよく、もっとクレクレとねだってきます。
ちなみにこちらは薬浴前に取った写真です。
前日あげた餌の糞が見え隠れしており、ヒレもまだ多く残っている状態ですので初期症状です。
2日目・寄生虫を発見、治療の変更
尾ぐされ病だと思っていた病気の原因が寄生虫によるものだと判明しました。
ご覧のように白い糸状のものが寄生虫・ギロダクチルスです。
このギロダクチルスは粘膜や上皮細胞を食べて成長する寄生虫で、これによって傷ついた個所がカラムナリス菌やエロモナス菌に感染し尾ぐされ病などを引き起こします。
ギロダクチルスがエラなどに寄生するとかなり厄介なことになり、最悪金魚が★になります。

肉眼ではほとんど確認できず、カメラのズーム機能を使用してやっと発見できる大きさです。
単に尾ぐされ病の影響でヒレが濁っているだけだと思い込み、寄生虫の存在に頭が回りませんでした。
不覚です・・・。
今回の発見で「ギロダクチルスによる損傷」→「細菌の感染」→「尾ぐされ病」の可能性が濃厚になりましたので、寄生虫の駆除治療を優先したいと思います。
なので治療を変更します。
変更後の治療内容はこちら。
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色々使いましたが、個人的にはこれが使いやすかったです。塩分濃度計測に。
投薬後 水換えは2、3日に一回とありますが 新たにまた 薬を
入れるのでしようか
くめむら 様
はい、新水に対して適量の薬を混ぜたうえで入れます。