水草の効果

水草 効果

金魚飼育において水草は必ずしも必要なものではありません。

しかし、金魚や飼育者にとって役に立つことが多く、頼りになる存在です。

また、水草と金魚の組み合わせはとても美しく、見栄えの良さからSNS等で頻繁に投稿されています。

そんな水草ですが、金魚飼育においては以下のような効果があると考えられています。

水質浄化

水草が水質浄化に貢献する要素は3点あります。

  1. 脱窒素作用
  2. オキシデーション
  3. 濾過バクテリアの定着

脱窒素作用

1点目、水草は好気性の濾過バクテリアが分解しきれない硝酸塩、リン分、カリウム等といった余分な栄養素を吸収し、光合成でアミノ酸、タンパク質を作り出すことが可能です。

これらの作用は脱窒(脱窒素作用)といい、水槽内の富栄養化を防ぐ効果があります。

「水草には脱窒素作用がある。これを利用すれば、めんどくさい水替えをしなくても金魚飼育ができるのでは?」と誰もが一度は目論みます。

しかし水草の脱窒素作用は微々たるものなので、これを達成するためには大量の水草が必要です。

詳細は後述しますが、あまり現実的ではないと思います。

水槽内で富栄養化が起こると、水の濁り、悪臭、コケの大量発生を引き起こします。

さらに悪化すると、増殖したバクテリアが水中の酸素を消費してしまい、酸欠を引き起こす可能性があります。

水槽内における生態系のバランスが崩れていると、金魚は病気になりがちです。

早急に対処してください。

オキシデーション

2点目、水草は日光を浴びることで光合成を行い、酸素を発生させます(オキシデーション)。

発生した酸素は水中の不純物と結合し、金魚や好気性の濾過バクテリアに消費されるため、水質浄化に貢献します。

濾過バクテリアの定着

3点目は水草を入れると、水草表面にバクテリアが定着しバクテリアのすみかになります。

その結果、生物濾過が安定し水質浄化につながります。

以上のように水草は、「脱窒」、「オキシデーション」、「濾過バクテリアの定着」という3点の水質浄化作用をもっているといえます。

おつまみ・餌になる

一般的に「金魚藻」とよばれるカボンバやマツモ、アナカリスといった水草の葉身は柔らかく、金魚の餌になり得ます。

ただし、金魚の水草好きは個体差があり、どんな金魚でも喜んで水草を食するわけではありません。

経験上、オスよりメスのほうが水草をよく食べる傾向があると思います。

また、水草は植物性たんぱく質の集合体であるため、金魚にとって消化に良く、腸にやさしい餌でもあります。

消化に悪い小麦粉が入っていることの多い人工餌に比べて、腸に負担をかけないといった利点から、薬浴中のおつまみにも最適です。

水草や苔を大量に食べさせれば、腸内環境が改善し、健康的な糞がでます。

消化不良からくる転覆病の治療方法としても効果的です。

その他

水草はそれ以外にも、他の金魚から身を守るための隠れ家となったり、直射日光を遮ってくれたり、卵を産みつける産卵藻になったりと、様々な場面で活用してくれる金魚にとって頼りになる存在です。

また、強すぎる水流を和らげる緩衝材や、水槽内のレイアウトのアクセントにもなり得るため、飼育者にとっても何かと便利な存在です。

【目的別】金魚に水草は必要か

以上のように水草の利点ばかり説明してきましたが、どのような金魚飼育を目指すかによって、水草の必要性は変わってきます。

水草によっては、金魚飼育では不要な二酸化炭素やカリウム等の添加が必要なものもあります。

どのような金魚飼育を目指すかはっきりさせてから、水草の有無を判断し、適切な水草の選択するようにしましょう。

ここでは以下の4つのケースについてみていきます。

  • 頻繁に水替えをする場合
  • レイアウトで入れたいが荒らされたくない
  • 餌の足しを与えたい
  • 水替えを少なくし水質浄化も期待したい

頻繁に水替えをする場合

水草は不要です。

例えば金魚を早く大きくすることを目指す場合、栄養価の高い餌をたくさん与える必要があります。

たくさんの餌を食べた金魚は大量の糞をし水を汚し、食べ残しも発生するので水質悪化に追い打ちをかけます。

こうなると水草の水質浄化作用では到底太刀打ちできず、頻繁に水替えをするしかありません。

水替えの際にかなり邪魔になるため水草は無い方が良いです。

レイアウトで入れたいが荒らされたくない

硬い水草が適切です。

見栄えの良い、美しいレイアウトの水槽を目指すならば水草は必須でしょう。

太陽光が差し込んだキラキラと光る水槽の中をひらひらと優雅に泳ぐ赤い金魚と、小さな気泡をまとった鮮緑の水草とのコントラストは本当に美しく、見る者の心を奪います。

金魚に詳しくない人でもうっとりと見とれてしまう光景です。

しかし、金魚が食い散らかした水草が漂う水槽は美しくありません。

この場合、葉身が硬い水草であれば金魚は食い散らすことができないので、悲惨な光景を防ぐことができます。

餌の足しを与えたい

柔らかい水草が必要です。

消化不良気味の金魚、薬浴中の金魚に餌としてあげたい、あるいは色揚げ効果のために水草を食べてもらいたい場合、やわらかい葉肉の水草が最適です。

ただし、上述したように金魚は水草を食い散らかすことが多いためこまめな掃除は必須です。

水替えを少なくし水質浄化も期待したい

水草は不要です。

「水草の水質浄化(脱窒素作用等)を利用して、めんどくさい水替えを少なくしたい。」

繰り返しになりますが、金魚を飼育する上で誰もが一度は考えます。

水草の水質浄化作用はなかなか侮れませんが、金魚は大変水を汚す生き物です。

金魚が汚した水を浄化するためには大量の水草を用意しなければなりません。

となると、水槽は水草だらけになるため、レイアウトへのこだわりは思い切って捨てるべきです。

水草だらけになった水槽を維持するのもそれほど楽ではありません。

枯れた水草は水質悪化につながるため、すぐに取り除く必要があります。

また水草の破片が濾過フィルターに詰まれば水流が滞り、水質浄化や生物濾過にも悪影響を与えてしまいます。

このように大量の水草を用意しても他の手間が増え管理が大変になりますので、水草に頼るより水替えを行うのが最良の選択といえます。

【目的別】金魚におすすめの水草

それでは上述した「レイアウト目的に合致した水草」、「餌に良い水草」を順番に紹介していきます。

また適切な飼育条件を記していますが、ここでは本格的に水草を育てるのではなく金魚飼育に添える形で入れるケースを想定しています。

レイアウトで入れたいが荒らされたくない

レイアウト目的で入れたいが荒らされたくない場合、以下の2種類の水草がメジャーです。

どちらも手に入りやすい水草ですが、他と比べて少し値段は高めになります。

アヌビアス・ナナ

アヌビアスナナ 金魚

  • 適切な水質:弱酸性~弱アルカリ性
  • 適温:20~28℃
  • 必要な光量:少なくてもOK
  • CO2の添加:無しでOK
  • 特徴:硬い葉っぱなので食べられない

アヌビアス・ナナは、アフリカ大陸に生育するサトイモ科の水草で葉は硬く大きさは10~15cmほどのものが多いです。

とても丈夫な水草で、水中でも水上でも育成が容易な点が魅力です。

照明が多少暗くても枯れることはないです。

また、流木や底砂等に活着できるためレイアウトを引き立たせる際に役立ちます。

しかし、成長は遅くコケ(クロヒゲゴケ)が着きやすいため、定期的なトリートメントは必須です。

厚手で丈夫な葉をもっているため、ほとんどの金魚は食べることができません。

しかし、スネールを食べる金魚もいるように稀に食べられることもあるため注意は必要です。(特に大型魚は力づくで食べようとします。)

ホテイアオイ

ホテイアオイ

  • 適切な水質:酸性~弱アルカリ性
  • 適温:15~30℃
  • 必要な光量:少なくてもOK
  • CO2の添加:無しでOK
  • 特徴:水面を塞ぐので横見飼育でおすすめ

ミズアオイ科の多年生の浮遊性水草、根は細く、水中に垂れる。葉は円形または卵円形、鮮緑色で光沢がある。水中の窒素やリンを吸収する能力が高く、プランクトンの発生を防ぐので、浄化も試みられている。

参考:ホテイアオイ 日本大百科全書(ニッポニカ)JapanKnowledge

フロート状に膨らんだ葉柄で、水面に浮かぶ水草です。

気温が高く、日当たりが良ければどんどん増えるため育成は容易ですが、気温が下がりすぎるとボロボロと崩れてくるので要注意です。

寒さに弱いため冬を越す場合はヒーターが必要です。

金魚は葉を食べませんが根を食べることもあります。

根を食べられてもすぐには枯れず、少量の光があれば再生します。

また、直射日光を遮る効果もあり、これを目的としてトロ船等に浮かべる方も多いです。

水草を餌としてあげたい

餌目的であげるのに最適な水草は葉肉の柔らかい水草です。

以下の3つが安くてメジャーで手に入りやすいと思います。

一般的に「金魚藻」とよばれる水草になります。

マツモ

マツモ 金魚

  • 適切な水質:弱酸性~弱アルカリ性
  • 適温:15~25℃
  • 必要な光量:少なくてもOK
  • CO2の添加:無しでOK
  • 特徴:金魚のおつまみと言われるほどよく食べられる水草

マツモ科の多年生沈水植物。根はなく、枝の変化した仮根で定着する。よく金魚鉢に入れるのでキンギョモ(金魚藻)とよばれることがあるが、キンギョモとよばれることがある。マツモ科はマツモ属1属3種からなり、いずれも水草で、世界に広く分布する。

参考:マツモ 日本大百科全書(ニッポニカ)JapanKnowledge

育成が容易で、水槽に放り込んでおくだけで大丈夫です。

勝手に成長して勝手に金魚の餌になってくれる上、日本の気候ならば年間通して枯れることもありません。

加えて、産卵藻にもなるという水草の万能選手です。

ただし、水質変化に少し弱いため、塩水浴や薬浴時には取り除いた方が良いでしょう。

カボンバ(ハゴロモモ)

カボンバ

  • 適切な水質:弱酸性~弱アルカリ性
  • 適温:10~28℃
  • 必要な光量:少なくてもOK
  • CO2の添加:無しでOK
  • 特徴:柔らかく食べやすいので水槽内が散らかりやすい

スイレン科の多年生水草で、こちらもキンギョモとも言われている。また属名を用いてカボンバとも称する。水槽でもよいが、池中に植えるとよく繁茂する。生育は水温20℃内外で盛んとなり、水が凍らなければ越冬できる。繁殖は挿芽により、ごく簡単に殖える。

参考:ハゴロモモ 日本大百科全書(ニッポニカ)JapanKnowledge

マツモよりも細い葉身で、金魚にとっても食べやすい水草です。

一般的に「育成は容易」といわれていますが、水質の変化に弱いため、水替えを頻繁に行う環境ではバラバラと散って無残な姿になってしまいます。

通常のカボンバは鮮やかな緑色ですが、レッドカボンバ、イエローカボンバといった色違いもあり、レイアウト目的にも利用可能です。

アナカリス(カナダモ)

アナカリス

  • 適切な水質:弱酸性~弱アルカリ性
  • 適温:10~30℃
  • 必要な光量:少なくてもOK
  • CO2の添加:無しでOK
  • 特徴:葉のみ食べられて茎だけになることも

トチカガミ科の沈水性多年生水草。茎は折れやすいが、再生力が強く、無性繁殖して日本各地の池や沼に分布。

参考:カナダモ 日本大百科全書(ニッポニカ)JapanKnowledge

今回紹介した中で最も丈夫な水草で、めったなことでは枯れません。

短い日数の塩水浴、薬浴ならば入れておいても大丈夫です。

しかも成長が早く、どんどん伸びるため金魚が食べなければ定期的にトリートメントをする必要があります。

マツモやカボンバほど人気はありませんが食します。

水質浄化を期待するなら

上記の中ではマツモ、カボンバ、アナカリス、ホテイアオイが脱窒をするため、水質浄化効果があります。

加えてマツモやアナカリスは成長も早いため、金魚に食べつくされる可能性が低く点も安心です。

カボンバは水質が安定しない環境では枯れてしまう可能性があるため、要注意です。

ホテイアオイも成長が早い水草ですが、枯れてしまった株はすぐに取り除きましょう。

アヌビアス・ナナは硝酸塩等をほとんど吸収しないので水質浄化は期待できませのでレイアウト用として割り切りましょう。

どんな水草でも、枯れてしまえば水質悪化につながります。

定期的なトリートメントや掃除を行うことを忘れずに注意してください。